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不動産売却で必要な書類は?必要書類と取得方法を解説
不動産を売却する際には、契約から所有権移転、引き渡し、税務申告に至るまで、さまざまな書類を準備する必要があります。
特に「何をいつ用意すればいいのか」「どこで/どのように取得すれば良いのか」を把握しておくことで、売却活動をスムーズに進めることができます。
本記事では、売却時に必要となる書類を一覧で整理し、それぞれの取得方法や注意点まで解説します。
不動産売却で必要な「基本書類」

不動産売却を行う際には、物件の種類や状況にかかわらず、すべての売主に共通して求められる基本書類がいくつかあります。
これらは売買契約の締結や所有権の移転、登記手続きなどにおいて必須となるため、事前にしっかりと準備しておきましょう。
以下では、それぞれの書類について詳しく解説します。
【1】本人確認書類
売主が間違いなくその不動産の所有者であることを証明するために、写真付きの本人確認書類が必要です。
具体的には、運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなどが該当します。
売買契約時や登記手続きの際に提出を求められます。
不動産が共有名義の場合は、共有者全員分の本人確認書類が必要です。
共有者が遠方に住んでいる場合は、取得や郵送に時間がかかることがあるため、早めに連絡を取り準備を進めておくことが大切です。
また、有効期限が切れていると使用できないため、期限の確認も忘れずに行いましょう。
【2】実印・印鑑証明書
売買契約書や所有権移転登記の際には、売主の「実印」と「印鑑証明書」の提出が求められます。
実印とは、市区町村に印鑑登録を行った印のことを指し、その証明書が印鑑証明書です。
契約に関する重要な書類に押印するため、法的にも非常に重要な役割を持ちます。
まだ印鑑登録をしていない場合は、売却前に市区町村の役所で登録手続きを行いましょう。
印鑑証明書はコンビニ交付も可能な自治体が増えており、マイナンバーカードがあればよりスムーズに取得できます。
ただし、印鑑証明書は「発行日から3ヶ月以内」のものが有効とされるため、取得タイミングには十分注意が必要です。
【3】登記済権利証(または登記識別情報)
この書類は、売却予定の不動産に対して売主が正当な権利者であることを証明する最も重要な書類の一つです。
かつては「登記済権利証」という名称でしたが、現在では「登記識別情報通知書」という形式で交付されるケースが多くなっています。
登記済権利証や登記識別情報は、不動産を取得した際に法務局から交付されるものであり、紛失した場合は再発行ができません。
そのため、事前に保管場所を確認しておくことが大切です。
紛失してしまった場合には、司法書士を通じた本人確認情報制度などの代替手続きを行う必要があり、追加の時間と費用がかかる点に注意が必要です。
【4】固定資産税納税通知書(または固定資産税評価証明書)
固定資産税に関連する書類も、不動産売却時には重要な役割を果たします。
毎年春に自治体から送付される「固定資産税納税通知書」や、市区町村役場で発行できる「固定資産税評価証明書」は、物件の課税評価額や納税状況を確認する際に使用されます。
売買代金の調整や、所有権移転登記の際に必要となる「登録免許税」の算出にも用いられます。
買主との間で税金の精算を行う場合や、確定申告で必要となるケースもあるため、紛失せず保管しておきましょう。
納税通知書は通常、所有者に対して毎年自動で送られてくるため、直近のものを用意すれば問題ありません。
紛失してしまった場合は、役所の資産税課などで評価証明書を発行してもらうことができます。
物件の種類・状況別に準備すべき「補助書類・任意書類」

不動産の売却時に必要な書類は、すべての物件に共通する基本書類だけではありません。
売却する物件の種類(戸建て・土地・マンション)や、所有状況(ローンの有無、共有名義など)によって、追加で準備すべき書類があります。
以下では、状況別に整理してご紹介します。
⚫︎戸建て・土地の場合
戸建て住宅や土地を売却する場合には、その物件が法令に基づいて建てられていることや、土地の境界が明確になっていることを示す書類の提出が求められることがあります。
「建築確認済証」や「検査済証」は、その建物が建築基準法などの法令に則って建てられたことを証明する書類です。
買主にとって建物の安全性を判断する重要な情報となるため、提示が求められる場合が多いです。
また「土地測量図」や「境界確認書」も必要になる場合があります。
これらは、土地の正確な面積や隣地との境界を示すもので、特に隣接地とのトラブルを避けるために重要です。
古い土地や長年売買されていない物件では、これらの書類が手元にないこともあります。
測量図や境界確認書が無い場合には、土地家屋調査士に依頼して新たに作成する必要があります。
売却の準備段階で早めに確認しておくと安心です。
⚫︎マンションの場合
マンションの場合には、専有部分だけでなく共有部分に関する情報も買主に引き継ぐ必要があるため、戸建てとは異なる書類が必要となります。
代表的なものとしては、管理規約・使用細則・長期修繕計画書などが挙げられます。
これらはマンション全体の管理体制やルール、将来的な修繕計画などを記した書類で、買主が購入後の生活をイメージする上で非常に参考になります。
また、付帯設備表や物件状況報告書(いわゆる告知書)も重要です。
室内設備の状態や修繕・故障歴、雨漏り・白アリ被害などの有無を正直に記載する書類で、契約時のトラブル防止に役立ちます。
⚫︎ローン残債・抵当権付きの場合
売却対象の不動産に住宅ローンの残債がある場合、売却にあたってはそのローンを完済し、抵当権を抹消する必要があります。
このため、「住宅ローン残高証明書」や「ローン返済予定表」の提出が必要になります。
これらの書類は、売却代金でローンが完済できるかどうかの判断にも使われます。
金融機関から発行される「抵当権抹消書類」も、所有権の完全な移転に必要です。
金融機関によって手続きの流れや必要書類が異なるため、事前に銀行に相談しておくとスムーズです。
引き渡し・名義変更のタイミングで準備する書類

売買契約が無事に成立しても、物件の引き渡しや所有権移転登記を行う段階で、さらにいくつかの書類が必要になります。
契約後から決済・引き渡し当日までに用意しておくべきものです。
まず、住民票は登記簿上の住所と現住所が異なる場合に必要になります。
所有権移転登記の手続きで使用されるため、発行から3ヶ月以内のものを用意しておきましょう。
次に、銀行口座書類(預金通帳・キャッシュカードなど)も提示を求められることがあります。
これは、売却代金の振込先口座を確認するために使用されます。
指定した口座に誤りがあると送金トラブルの原因になるため、正確な情報を提示することが重要です。
さらに「鍵一式」「取扱説明書」「設備仕様書」なども準備しておくと安心です。
買主に対して、物件の引き渡し時に一緒に渡すことが望ましいとされています。
特に鍵の本数や複製の有無などは、事前にリストアップしておくとスムーズな引き渡しができます。
税務・確定申告のために必要な書類
不動産売却によって利益(譲渡所得)が発生した場合、翌年に確定申告を行う必要があります。
その際に必要となる書類も、売却時点で準備・保管しておくと安心です。
最も基本的な書類として、売買契約書(売却時・購入時いずれも)が必要です。
譲渡所得を計算する際に「売却価格」「取得価格」を証明するために使われます。
また、売却時の諸経費(仲介手数料・印紙税・測量費・解体費など)や購入時の取得費用に関する領収書や請求書も、費用として計上するために必要です。
これらは所得税の節税につながる可能性があるため、できるだけ細かく保管しておきましょう。
さらに、譲渡所得に関する「内訳書」や「確定申告書類一式」も必要になります。
これらの書類は、確定申告時期である翌年の2月16日〜3月15日の間に税務署へ提出する形となります。
e‑Taxなどのオンライン申告を利用する場合も、関連書類の電子データの保存や一定期間の保管義務が課されることがあります。
電子データでの領収書や契約書を受け取った場合には、削除せずに保管しておきましょう。
書類準備時のポイント&よくあるトラブルと対策
不動産売却に必要な書類は多岐にわたるため、単に書類を揃えるだけでなく、スムーズかつ確実に取引を進めるための準備の仕方も重要です。
以下では、書類準備時に注意すべきポイントと、実際によくあるトラブル、そしてその対策について解説します。
●有効期限の確認を怠らない
書類によっては「発行から○ヶ月以内」のものしか使えない場合があります。
「印鑑証明書」や「住民票」は、多くの場合「発行から3ヶ月以内のもの」が必要です。
契約前に用意していた書類が、いざ引き渡しや登記手続きの際に「期限切れ」で再発行が必要になるケースは少なくありません。
こうしたトラブルを避けるためには、契約スケジュールに合わせて書類を取得するタイミングを調整することが大切です。
●紛失書類の確認は早めに
特に注意したいのが、「登記済権利証(または登記識別情報)」の紛失です。
この書類は再発行ができず、代替手続きとして「本人確認情報の作成」などの法的手続きを取る必要があり、司法書士への依頼と追加費用が発生します。
ほかにも、建築確認済証や境界確認書、購入時の契約書などは、長年保管されているうちに紛失していることも多いため、売却を検討し始めた段階で手元にあるかどうかを必ず確認しておきましょう。
●共有名義・相続・離婚等の特殊ケースでは追加書類が必要
物件が「共有名義」になっている場合には、共有者全員の同意や書類提出が必要になります。
共有者の印鑑証明書や本人確認書類が揃っていないと契約自体が成立しないこともあります。 また、相続物件の場合には「遺産分割協議書」「戸籍謄本一式」「相続登記済み証明書」などの追加書類が求められます。
離婚後の財産分与による名義変更が未了の物件についても同様に、手続きが複雑化しやすいため、早めに専門家(司法書士・弁護士等)に相談することが重要です。
●物件の種別による違いを把握する
戸建て、マンション、土地といった物件の種別によって、必要な書類の内容や取得元が変わります。
戸建て/土地:境界確認書、建築確認済証、検査済証、土地測量図など。
マンション:管理規約、長期修繕計画書、使用細則など。
同じ「不動産売却」でも物件のタイプごとに必要な情報が異なるため、自分の物件タイプに特有の書類は何かを明確にしておくと、準備の抜け漏れを防げます。
●書類準備は“段階ごと”に行うと効率的
書類は一気にすべて揃える必要はありません。
「査定依頼前」「媒介契約時」「売買契約時」「引き渡し時」など、ステージごとに必要書類は異なります。
たとえば、媒介契約時には「本人確認書類」「登記識別情報」、引き渡し時には「鍵」「住民票」などが必要となるため、事前にスケジュールを立てて段階的に準備することで、余計な手間や再取得を防ぐことができます。
まとめ
不動産売却をスムーズに進めるためには、売却開始前から「どの書類をいつまでに」「どこで取得するか」を把握しておくことが重要です。
特に「登記済権利証/登記識別情報」「実印・印鑑証明」「固定資産税関連書類」などの基本書類は、初動で準備しておくべきです。
また、物件種別や所有状態(共有・ローン残債あり等)によって必要書類も変わるため、状況に応じた補助書類の準備も忘れずに。
期限・有効性・所在の確認を怠ると、契約締結や引き渡し、名義変更などで手続きが滞る恐れがあります。
早めに準備し、必要に応じて専門家(不動産会社・司法書士・税理士)に相談することで、売却活動から引き渡し・確定申告まで安心して進めましょう。
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