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セットバックとは?建築時に知っておきたい道路幅のルール

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2025.04.08

セットバックとは?建築時に知っておきたい道路幅のルール

2025.04.08

セットバックとは?建築時に知っておきたい道路幅のルール売買の窓口】

家を建てようと思ったら、「セットバックが必要です」と言われた——

そんな経験はありませんか? 

建築や土地探しの場面で突然出てくるこの言葉。

聞き慣れないうえに、どうして自分の土地を“下がって”使わなければいけないのか、疑問に感じる方も多いはずです。 


実は、「道路の幅」が家づくりに大きな影響を与えるルールがあるんです。

特に、古い住宅地や幅が狭い道路沿いの土地では「セットバック」という制度が関係してきます。 

この記事では、セットバックとは何か、なぜ必要なのか、そして土地購入や建築にどんな影響があるのかを、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。


セットバックとは?

家を建てる際には、その土地に接する道路の幅によって、思い通りに建物を配置できないケースがあります。

たとえば、敷地の前面道路が一定の幅に満たない場合には、建物を道路から一定の距離だけ後退させて建てなければならないことがあります。

このように、道路側にスペースを空けて建物を後ろに下げることを「セットバック」といいます。


一見、自分の土地なのに使えないのはもったいないと感じるかもしれませんが、この制度にはしっかりとした理由があります。

セットバックは、将来的に道路を広げるための“予備スペース”としての役割を持っていて、特に幅の狭い道路では、消防車や救急車の通行・避難経路の確保といった安全性の向上にもつながります。

つまり、セットバックは単なるルールではなく、地域全体の暮らしやすさや安全性を保つための大切なしくみなのです。


なぜ「道路幅」が建築に影響するの?

家を建てるとき、土地の広さや形だけでなく「どんな道路に接しているか」が非常に重要なポイントになります。 

というのも、建築基準法では「幅員4メートル以上の道路に、2メートル以上接していなければ建物を建てられない」というルールが定められているからです。 

このルールは、敷地への出入りや通行のしやすさだけでなく、災害時の避難や緊急車両の通行を確保するための安全対策として設けられています。 


ここでいう「道路」とは、一般的に私たちが想像する公道や生活道路だけではなく、建築基準法第42条で定義された「法的な道路」を指します。 

そして、この「法的な道路」にはいくつかの種類があり、なかには一見するとただの狭い私道に見える道路でも、法律上の道路として扱われるケースもあります。 

特に注意しておきたいのが、「42条2項道路(いわゆる“2項道路”)」「位置指定道路」と呼ばれるタイプの道路です。

見た目では判断が難しく、思わぬ制限やセットバックが必要になる可能性があるため、事前の確認が欠かせません。


42条2項道路(いわゆる“2項道路”)

画像:スーモ

道路幅が4メートル未満でも、「法的な道路」として認められている古い道路が、この「2項道路」です。 

戦後まもなく整備された住宅地などに多く見られ、建築基準法が制定される以前からすでに使われていた道路が該当します。 

2項道路は、今後も通行に使われることを前提として、特例的に“道路”として扱われているのですが、幅が狭いままだと、救急車や消防車の通行に支障が出る恐れがあります。 

そこで、建物を新築・建て替える際には、道路の中心線から2メートルの位置まで敷地を後退させて建てなければならないというルールが適用されるのです。 

これが、いわゆる「セットバック」の義務です。


位置指定道路(いちしてどうろ)

画像:ソライチマガジン

一方、位置指定道路とは、新しく分譲地などを開発する際に、私道を“建築基準法上の道路”として使うために自治体から指定された道路です。 

この位置指定を受けることで、その道路に接する各区画は「道路に面している」と認められ、家を建てられるようになります。

 

ただし、注意したいのは古い分譲地などにある、幅が4メートル未満の位置指定道路です。 

このような道路の場合でも、将来的な拡幅を見越して、セットバックが求められるケースがあります。 

位置指定道路は私道であるため、維持管理の責任も住民にあることが多く、道路の幅や所有権の問題は慎重に確認すべきポイントです。


セットバックするとどうなる?

セットバックが必要になると、その分だけ建物を道路から後退させて建てなければならなくなります。

たとえ土地の登記面積が十分にあっても、建築に使える範囲(建築可能面積)は実質的に小さくなってしまうということです。 


敷地の前面道路が幅3メートルだった場合、道路の中心線から2メートルのラインまで下がる必要があり、片側50センチのセットバックが必要になります。

これが道路沿いにわたって続くと、意外と大きな面積が建築に使えなくなることも。 

また、建ぺい率や容積率を計算する際に、セットバック後の敷地面積が基準になるケースもあるため、建てられる建物の規模が制限される場合もあります。 

特に狭小地や変形地では、セットバックによって思っていたより小さな建物しか建てられない可能性があるので、事前にしっかり確認しておくことが大切です。


セットバック部分は誰のもの?

セットバックで後退した部分は、道路の一部として扱われますが、所有権そのものは基本的に土地の所有者に残ります。 

つまり、「建物は建てられないけれど、自分の土地である」という少しややこしい状態になります。 

この部分は、建築基準法上では「道路とみなされる敷地(みなし道路)」として取り扱われるため、物置を置いたり、門扉を設けたりといった使い方も制限されるケースがあります。 

あくまで「将来の道路として使える状態にしておく」ことが求められるのです。 


さらに注意したいのが税金の問題です。 

セットバック部分は使い道が制限されているにもかかわらず、固定資産税の課税対象になることが多いのです。

 「道路なのに税金がかかるの?」と驚く方も多いですが、これは自治体の判断によるところが大きく、自治体によっては軽減措置や非課税措置が適用される場合もあります。 

そのため、購入前や建築計画の段階で、役所や不動産会社に詳細を確認することが重要です。 

セットバック部分がどこまでに及ぶのか、税制上どう扱われるのかをしっかり把握しておきましょう。


まとめ

「セットバック」とは、ただ建物を後ろに下げるというだけの話ではなく、 地域の安全性や暮らしやすさを守るために欠かせない仕組みです。 

特に、前面道路が4メートル未満の土地や「42条2項道路」「位置指定道路」に面している土地では、セットバックが必要になるケースが少なくありません。 

セットバックによって、

・実際に建てられるスペースが狭くなる

・建ぺい率や容積率に影響が出る

・セットバック部分の使い道が制限される

・所有権や税金の扱いに注意が必要

といった点を事前に把握しておかないと、希望の建物が建てられなかったり、予期せぬ費用がかかったりするリスクもあります。


土地を購入するときや家を建てるときは 「道路の幅は十分か?」「セットバックの必要はあるか?」を、不動産会社や市区町村の窓口にしっかり確認してから進めるようにしましょう。